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ASP感染管理のQ&A | ASP Japan合同会社

ESBL-s大腸菌の検出された例についての感染対策

患者の便からESBLs-大腸菌が検出されたのですが、下痢などの症状は無く保菌者と思いますが。便以外の材料からは検出されませんでした。当院では便からESBLs産生菌が検出されても、培養結果としては報告していません。院内感染対策の監視菌なので報告書を作成して、接触感染予防対策を実施したほうがよいのですか、また菌が消失するまで定期的に検査(培養)が必要ですか?

 

基質特異性拡張型βラクタマーゼ(Extended Spectrum beta-Lactamase, ESBL)産生菌は、ほとんどのβラクタム系抗菌薬に耐性を獲得した薬剤耐性菌です。薬剤耐性菌は、保菌患者に触れた手指や物品との接触により伝播します。検出部位に限らず、保菌患者の身体と周囲の高頻度接触環境表面(ベッド柵、シーツ、医療機器など、人の手が頻繁に触れる環境表面)は、患者自身が持つ薬剤耐性菌で高度に汚染されています。そのため、ESBL産生菌を含む薬剤耐性菌は、通常、接触予防策の対象となります。ご施設で、臨床培養検体からESBL産生菌がしばしば検出されるようであれば、サーベイランスにより日常的な発生頻度を把握し、接触予防策の効果の評価やアウトブレイクの早期発見に活用されると良いのではないでしょうか。

また、ESBLに限らず、薬剤耐性菌に対する接触予防策を解除してもよいと考えられる条件は明らかにされていません。薬剤耐性菌をひとたび保菌すると、その後も長期的に保菌する可能性があるからです。ただし、米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention, CDC)の薬剤耐性菌対策に関するガイドラインによると、過去数週間以内に抗菌薬投与を受けておらず、浸出液の多い開放創や多量の気道分泌物もない患者の場合、1〜2週間の間に実施したスクリーニング検査が3回以上連続して陰性であれば隔離を解除することは許容されるのではないかとしています。

参考文献
  1. Tschudin-Sutter S, Frei R, Dangel M, Stranden A, et al. Rate of transmission of extended-spectrum beta-lactamase-producing enterobacteriaceae without contact isolation. Clin Infect Dis. 2012;55(11):1505.
  2. Hilty M, Betsch BY, Bögli-Stuber K, et al. Transmission dynamics of extended-spectrumβ-lactamase-producing Enterobacteriaceae in the tertiary care hospital and the household setting. Clin Infect Dis. 2012;55(7):967.
  3. Siegel JD, Rhinehart E, Jackson M, Chiarello L; Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee. Management of multidrug-resistant organisms in health care settings, 2006. Am J Infect Control. 2007;35(10 Suppl 2):S165-93.

この質問に回答いただいたのは・・・

坂本史衣先生

学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院 QIセンター

1991年聖路加看護大学卒業、聖路加国際病院公衆衛生看護部を経て、1997年米国コロンビア大学公衆衛生大学院卒業。聖路加国際病院看護部勤務の後、日本看護協会看護研修学校 感染管理認定看護師教育課程専任教員。2002年より現職。米国感染管理疫学資格認定機構 (CBIC)による感染制御認定資格(CIC)取得。日本環境感染学会理事、日本医療機能評価機構患者安全推進協議会感染管理部会副部会長。

学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院 QIセンター 坂本史衣先生