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ASP感染管理のQ&A | ASP Japan合同会社

B型肝炎ワクチン接種間隔について

現在、当院では4月の職員検診にてHBs抗体を確認し10mIU/mL以下の職員へB型肝炎ワクチン接種を「0-1-6ヶ月」にて実施しています。
新入職者のうち在学中のB型肝炎ワクチン未接種のため、10mIU/mL以下の職員が多数あり、迅速な抗体価獲得の目的でB型肝炎ワクチン接種間隔を「0-1-3ヶ月」へ変更を検討しています。
「遺伝子組換えHBワクチンの接種成績」の研究報告では、「0-1-3ヶ月」の接種間隔の抗体価陽性率96%程度ですが、平均抗体価は14.5-20.7mIU/mL低い結果でした。迅速な抗体価獲得のための接種間隔変更は妥当でしょうか?相談室の先生方の施設では新入職者のHBs抗体10mIU/mL以下の職員へどのように対応されていますか?また、在学中のワクチン接種の推奨はどのように進めると浸透しますか?ご回答よろしくお願いします。

 

HBs抗体価が不十分な新入職者がB型肝炎ワクチン(以下HBVワクチン)の接種(0-1-6ヶ月)を完了するまえにHBVに感染してしまうことを恐れて、早期にHBs抗体を獲得することを目的として、HBVワクチンの接種のタイミングを短縮してもよいのかというご質問でした。これについて、CDCのホームページから関連する3件の記述を紹介し、それらを統合して回答とさせていただきます。

[医療従事者へのワクチン接種の推奨]1)
未接種の医療従事者や接種既往を証明できない医療従事者には「0-1-6ヶ月」の3回接種をすべきである。血液もしくは血性体液に曝露するかもしれない業務をおこなう医療従事者は免疫を確認するために3回目の接種から1〜2ヶ月の時点でHBs抗体を測定する。HBs抗体が10mIU/mL以上あれば、免疫があるといえる。そのような人には更なる抗体検査やワクチン接種は推奨されない。
HBs抗体が10mIU/mL未満ならば、B型肝炎ウイルス(HBV: hepatitis B virus)への免疫がないので、3回の接種をおこなってから、その1〜2か月後にHBs抗体を測定する。6回の接種後にHBs抗体が10mIU/mL未満ならば「ノンレスポンダー(non-responder)」ということになる。

[旅行者の健康:第3章 旅行に関連した感染症]2)
HBVワクチンは免疫を獲得するために「0-1-6ヶ月」の3回接種として投与されるのが一般的である。2回目の接種は1回目のあと1ヶ月以上経過してから接種すべきである。3回目は2回目接種後2ヶ月以上、かつ、1回目接種後4ヶ月以上経過してから接種する。
HBVワクチンは旅行に出発する6ヶ月以上前に接種を開始すれば、出発までにワクチンの接種プログラムを完了できる。1回もしくは2回の接種によって、ある程度の抗体を獲得できるので、出発前に完了できないとしても、ワクチンの接種は開始しておくべきである。しかし、十分な抗体は3回接種がなされるまでは獲得できないので、ワクチンを完了することを勧められるべきである。災害区域に派遣される救急隊員や曝露に直面する可能性があることが出国までの日数が不十分な状況で知らされた人には短期接種プログラムを用いることがある。このプログラムでは「0日、7日、21〜30日」の3回接種をおこない、長期の免疫を確保するために12ヶ月でブーストする。

[米国におけるB型肝炎ウイルス感染症の伝播を駆逐するための包括的免疫化戦略]3)
40歳未満の人では1回目の接種後は30〜55%の人でHBs抗体が獲得される。2回目で75%、3回目で90%以上の人が抗体を得ることができる。40歳を超えると、3回接種後の抗体獲得率は90%以下となり、60歳では僅か75%の人でしか抗体を得ることができない。年齢に加えて、その他の宿主要因(肥満、喫煙、遺伝的要因、免疫抑制など)もワクチンの効果を減弱させている。代替スケジュール(例:「0-1-4ヶ月」もしくは「0-2-4ヶ月」)は「0-1-6ヶ月」スケジュールで得られる最終的な抗体価を得ることが示されている4)

[結論]
新入職者の多くは40歳未満と思います。そのため、1ヶ月間隔での2回接種にて75%の人が抗体を獲得できることになります。残りの25%の人をどのように守るかということになります。この場合、旅行者での短期接種プログラムを応用して1ヶ月で3回接種(0日、7日、21〜30日)してしまうという戦略も採用できますが、医療従事者では長期の免疫を獲得する必要があるので、1年後のブースター接種が必要となります。これは経済的に病院の負担が増加してしまうので、難しい戦略となります。
それでは、「0-1-3ヶ月に変更」というのはどうなのでしょうか?このプログラムでは、3回目の接種によるブーストが不十分になる可能性があるため、1年後の接種は避けられません。3回目接種のタイミングを1ヶ月遅らせた「0-1-4ヶ月」もしくは「0-2-4ヶ月」というプログラムであれば可能と思います。
しかし、本来の「0-1-6ヶ月」で接種しておき、接種が終了するまではHBVに脆弱な期間があることを啓発して、標準予防策を徹底するのが最善と思います。特に、血液・体液に触れるときには手袋を装着すること、肝炎症状(倦怠感など)がみられた場合には迅速に受診することが大切です。浜松医療センターではHBs抗体が10 mIU/mL以下の新入職者には、就職してからすぐに「0-1-6ヶ月」のプログラムを開始しています。
当然のことながら、在学中のワクチン接種の推奨は必要です。学生は病院に実習に来ているので、実習期間にHBVに曝露する可能性があるからです。従って、実習前にHBVワクチンを完了しておかなければなりません。病院実習の期間に感染した場合の責任が病院にあるならば、実習前に学生のHBs抗体が10 mIU/mLであるという書類が必要であることを学校に通達するのがよいと思います。

参考文献
  1. CDC. Healthcare personnel vaccination recommendations
    http://www.immunize.org/catg.d/p2017.pdf
  2. CDC. Traveler’s Health: Chapter 3 Infectious diseases related to travel
    http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2014/chapter-3-infectious-diseases-related-to-travel/hepatitis-b
  3. CDC. A Comprehensive immunization strategy to eliminate transmission of hepatitis B virus infection in the United States.
    http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5516.pdf
  4. Lemon SM, Thomas DL. Vaccines to prevent viral hepatitis. N Engl J Med 1997;336:196-204.

この質問に回答いただいたのは・・・

矢野邦夫先生

浜松医療センター 副院長 兼 感染症科長

1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋掖済会病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センター。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科にてエイズ臨床短期留学、米国エイズトレーニングセンター臨床研修終了。2008年より同院副院長。医学博士、ICD、感染症専門医、血液専門医、内科認定医、藤田保健衛生大学客員教授、浜松医科大学臨床教授。

浜松医療センター 副院長 兼 感染症科長 矢野邦夫先生