1. HOME >
  2. 感染管理情報TOP >
  3. 製品関連情報誌 >
  4. 滅菌関連情報誌 >
  5. 2009年7月 Vol.16

滅菌関連情報 PLASMA LINK | ASP Japan合同会社 〜2009年7月 Vol.16

Special Report
できるところから始めることが大切。CJD対策運用までの経緯

神奈川県立こども医療センター(神奈川県横浜市)

この記事のテーマ
  • ガイドライン
[画像] 神奈川県立こども医療センター(神奈川県横浜市)

医療現場でのCJD感染予防に主眼をおいた「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」が、2008年9月に公開されました。このガイドラインにいち早く対応したのが、横浜市内の神奈川県立こども医療センターです。現場の声を聞きながら、準備を一つひとつ進める中で、2009年3月に独自のマニュアルが完成した。同院のCJD対策について、中央手術室 看護科長の金氣 文子さんと看護師の権守 礼美さんに伺いました。

病院機能評価の準備中にガイドラインが公開

神奈川県立こども医療センターは、小児病院、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設の三つの施設からなり、医療と福祉を一体として提供する小児総合医療・福祉機関です。1970年の開設以来、こどもたちの病気の診断と治療に、そして医師をはじめ小児医療に携わる様々な職種の育成に大きな成果をあげてきました。

2006年1月には、新しい本館で診療を開始し、現在、病院には総合診療部門、内科系専門医療部門、外科系専門医療部門、こころの診療部門、周産期医療部門、医療技術部門の6部門を設置。高度先進医療施設として、国の定める特定承認保険医療機関に認定されると共に、外国医師・歯科医師の小児疾患の修練が行える臨床修練指定病院としても指定を受けています。

中央手術室 看護科長 金氣 文子 さんの写真

中央手術室 看護科長
金氣 文子 さん

中央手術室 看護師 権守 礼美 さんの写真

中央手術室 看護師
権守 礼美 さん

「小児科病院が減っている中で、当院には、北海道から九州まで、全国各地から患者さまがいらっしゃいます。私たちのような小児総合病院の果たすべき責任・役割は、ますます大きくなっていると強く感じています」と真摯な眼差しで語る金氣さん。その言葉を裏付けるように、手術件数は、ここ2年ほど、毎年150 件ずつ増え続け、2008年度には3,895件に達しています。

そんな同院が、CJD対策に取り組み始めたきっかけは、2008年のガイドライン公開後すぐのことでした。当時、感染対策リンクナースであり、院内の ICTメンバーだった権守さんは、こう語ります。

「その頃は、ちょうど病院機能評価の認定審査を受けるために、感染防止マニュアルを見直しているときでした。院内の通達でガイドラインについて知り、手術室のマニュアルも見直すことになりました」。

同院では、CJD対策の対象となる手術は、ほとんどすべてがハイリスク手技に該当する脳神経外科手術です。その件数は年間で約130件になります。その他、眼科については、網膜に関連するものが1年に1、2回あります。そこで、脳神経外科や眼科の看護師にも協力を得ながら、権守さんが中心となって、 CJD対策に取り組み始めたと言います。

「最初に行ったのは、器材の確認と滅菌方法の見直しでした。ガイドラインによると、オートクレーブ、過酸化水素低温ガスプラズマ、SDSが処理方法として推奨されているので、従来行っていた滅菌方法の再検討が必要となりました。そこで、すべての脳神経外科の器材について、オートクレーブや過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌での処理で劣化しないかどうかを、1カ月ほどかけて各器材メーカーに確認しました」(権守さん)。

従来の用手洗浄をできる限り器械洗浄へ

続いて行ったのは、洗浄方法の見直しでした。同院の中央材料室では、委託業者約20名が常駐し、洗浄・滅菌業務等を行っています。その洗浄工程を改めて確認したところ、昔からの習慣で用手洗浄している器材が多いことがわかりました。

「その理由は、手術が深夜に及んだ場合に、器材を洗剤につけた状態で一日の業務を終了し、翌日に用手洗浄をする習慣があったからです。このように用手洗浄していたものを、できるかぎりウォッシャー・ディスインフェクター洗浄に切り替えようと考えました。不確実な用手洗浄から、器械洗浄に切り替えることで、洗浄の精度を高めることが目的でした」(権守さん)。

そのときに、問題になったのは、現場にいるスタッフたちの負担でした。「夜遅くなったとき、その日の内にどこまでやらなければいけないのか」など、様々な疑問が寄せられたといいます。その結果、たどり着いたのが、基本的にはすべてウォッシャー・ディスインディフェクターにかけて、その後、内腔のある器材など手洗いが必要なものだけは用手洗浄を行なうという二重洗浄の方法でした。

「ガイドラインでは、ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄した場合は、オートクレーブ滅菌で8〜10分間、用手洗浄の場合は、18分間処理を行うことが推奨されています。しかし、滅菌時間を器材に応じて変更することは、運用上の混乱が起きる可能性があります。そこで、一度すべての器材をウォッシャー・ディスインフェクターにかけることで、業務の流れを単純化し、間違いを無くそうと考えました」(権守さん)。

器材の中には、吸引嘴管や軟性穿刺針のように、ウォッシャー・ディスインフェクターに対応していないものもあります。また、ディスポ化しなければならないものもあります。こうした器材の特徴も一つひとつ確認したという権守さん。当時ご苦労された話を語ってくれました。

「器材の中には、頭部を消毒するために使うハケがあります。通常は、開頭する前に使うものなので、EOG滅菌でよいのですが、開放性髄膜瘤の消毒にも使われることがあります。このような場合は、ハケをディスポ化にすべきか、他に方法があるのかなど、医師にも相談しました。その結果、ハケの代わりに鉛のガーゼで消毒しようということになりました。
また手術後の器材を、洗浄カゴに入れる際には、誰が見てもわかるように脳神経外科の器材に目印となる札を入れて、他の器材と区別しています」(写真2)。

当初は、2008年末にガイドラインに則したマニュアルの原案が作られましたが、その後、日々の業務の中でこのような現場の声を吸い上げながら修正を重ねた結果、2009年3月にCJD対策マニュアルが完成しました(写真1)。

写真1 「プリオン病感染予防マニュアル」 中央材料室内の数か所に設置し、周知徹底に努めている。

写真1 「プリオン病感染予防マニュアル」
中央材料室内の数か所に設置し、周知徹底に努めている。

写真2 洗浄工程 アルカリ洗剤の希釈液に浸す際、水槽に札をかける(左)。洗浄機にかける場合は、トレイに目印となる札を添える(右)。その後、用手が必要な器材のみ、用手洗浄を行う。

写真2 洗浄工程
アルカリ洗剤の希釈液に浸す際、水槽に札をかける(左)。洗浄機にかける場合は、トレイに目印となる札を添える(右)。その後、用手が必要な器材のみ、用手洗浄を行う。

新生児から10代まで手術セットはさまざま

一般的に、規模の大きな病院では、手術の内容によって、手術器材のセット組みが決められています。そのため、例えば脳神経外科の開頭用としてセットされた器材は、洗浄・滅菌後も再びセットされて、同じ開頭セットとして払い出されます。

しかし、同院では、新生児から10代まで患者の身体の大きさが異なるので、手術のたびに器材が異なります。そのため、器材は単純にセット化できません。診療科に関係なくすべて共有して使用されていました。こうした理由から、中央材料室では、洗浄工程を済ませた器材は一度すべて棚に戻され、その後、手術のたびにセット化されて、滅菌工程に回っていたと言います。

(左)権守 礼美 さん (右)金氣 文子 さん 写真

「こうした洗浄から滅菌までの工程についても、現場の声で改良を加えられました。棚に入れる際の安全性を確保するために、洗浄後にそのまま棚に戻すのではなく、オートクレーブ滅菌できるものは一度まとめて滅菌してから棚に戻すことにしたのです。オートクレーブは3台体制で、1日に何回も稼働していましたから、現場では大きな負担になりませんでした」(権守さん)。

1回目はまとめてパックに2回目は個別包装で

過酸化水素低温ガスプラズマについては、アルカリ洗浄後に「2サイクル」行うことがガイドラインで推奨されています。しかし、2サイクルとも器材を一つひとつ個別包装するとなると、手間や時間が大幅に増えてしまいます。そこで、権守さんたちは、ガイドラインの内容をいかにマニュアルに反映させるかについて、現場のスタッフと話し合い、各種セミナー等に参加しながら情報収集もしました。

写真3 滅菌工程「過酸化水素プラズマ滅菌器」で滅菌する場合

写真3 滅菌工程「過酸化水素プラズマ滅菌器」で滅菌する場合

その結果、脳神経外科の器材については、1サイクル目はトレイにまとめて入れ、目印となる札とインディケーターを添えて、大きなパックにした状態で滅菌をすることにしました。そして、2回目には、他の器材と同じように個別包装してから滅菌することにしました(写真3)。

CJD感染リスクが低い小児領域でもできるところから対策をスタート

現在、同院の洗浄・滅菌体制は、ウォッシャー・ディスインフェクターが2台、オートクレーブが3台、EOG滅菌器が1台、過酸化水素プラズマ滅菌器が1台です。平日はオートクレーブが1日のべ4〜6回、EOG滅菌器は1回、過酸化水素プラズマ滅菌器は1〜2回稼働しています。

そのうち、今回のCJD対策での主な設備投資は、ウォッシャー・ディスインフェクター1台のみでした。既にある設備を使って、コストや時間などの負担を最小限に抑え、できるところから感染予防対策をスタートさせたことが最も大きな特徴です。

一般的に、小児はプリオン病のリスクが低いと言われています。しかし、可能性はゼロではありません。当院では、国のガイドラインを受けて、まずはできるところから始めました。そして、現場の負担を考え、様々な人から意見を聞きながら、マニュアルの改良を重ねていきました。このようなことは一人ではできません。チームなどを作り、現場の意見を反映させて、その病院に合った実践的な対策を立てていくことこそ大切なのだと思います」と語る権守さん。金氣さんもこう返します。

「このガイドラインが出るまでは、私たち看護師たちもプリオン病についてほとんど知りませんでした。これを機会に、より多くの人に感染予防について関心を高めてもらえればいいですね」。

施設の紹介

[画像] 神奈川県立こども医療センター

神奈川県立こども医療センター

神奈川県横浜市南区六ツ川2-138-4
病床数:419床
手術室数:9室
手術件数:3,895件
(2008年度)

神奈川県立こども医療センターのウェブサイト

* ご注意:上記のリンク先ウェブサイトは、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーのプライバシーポリシーは適用されません。リンク先のプライバシーポリシーを確認ください。