1. HOME >
  2. 感染管理情報TOP >
  3. 製品関連情報誌 >
  4. 内視鏡関連情報誌 >
  5. 2008年10月 Vol.15

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2008年10月 Vol.15

座談会 「消化器内視鏡の洗浄・消毒 マルチソサエティガイドライン」について

日本消化器内視鏡技師会会長(平塚胃腸病院・検査部) 田村 君英 氏

日本消化器内視鏡技師会・安全管理委員会委員長(NTT 東日本関東病院・内視鏡部) 佐藤 絹子 さん

日本消化器内視鏡技師会・安全管理委員会委員(帝京大学溝口病院・内視鏡室) 藤田 賢一 氏

この記事のテーマ
  • ガイドライン
  • 洗浄消毒記録
  • 消毒薬濃度管理

日本環境感染学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器内視鏡技師会の合同による「消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサエティガイドライン」が本年5月に発行されました。本ガイドライン作成委員会のメンバーとして関与された日本消化器内視鏡技師会・会長の田村君英氏、同会安全管理委員会・委員長の佐藤絹子さん、同会安全管理委員会・委員の藤田賢一氏にお集まりいただき、本ガイドライン作成の意義および日本消化器内視鏡技師会発行の「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン第2版」との位置づけ、さらには両ガイドラインとの相違点に関する見解などについてうかがいました。

広島大学病院 内視鏡診療科教授 田中 信治 先生

「マルチソサエティガイドライン」の意義

感染管理の専門家の意見を内視鏡室に導入したい

なぜ、「消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサエティガイドライン」(以下、「マルチソサエティガイドライン」と略)を作成したのでしょうか?

田村日本消化器内視鏡技師会では、1996年に「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン」を示し、その後、新しい消毒薬が登場したことなどを受けて2004年に第2版を発行して、ガイドラインの普及に注力してきました。しかし、院内全体の感染管理活動面からみると、やや内視鏡のスコープやその他の機器に限定した対策ともいえるのではないかと思い、内視鏡室全体の感染管理を総括的に捉えていく必要性を感じました。

そこで、感染管理の専門家の意見を消化器内視鏡室に導入したいと考えて、日本環境感染学会の先生方に相談したことが「マルチソサエティガイドライン」作成の契機です。

日本環境感染学会の反応はいかがでしたか?

田村私たちの趣旨に全面的に賛同していただきました。そして、日本環境感染学会と消化器内視鏡の専門家集団である日本消化器内視鏡学会および内視鏡の洗浄・消毒に強い関心をもっている日本消化器内視鏡技師会の3者で共同して「マルチソサエティガイドライン」を作成する運びになりました。

技師会からの情報に触れていない施設や部門も対象にしたい

「マルチソサエティガイドライン」を作成して発行するまでの経緯を教えてください。

佐藤2004年9月に、日本環境感染学会の先生方と最初のミーティングを持った後、2006年9月に3つの学会合同の本会議を行い、消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサエティガイドライン作成委員会をスタートしました。日本環境感染学会理事長の大久保憲先生や田村会長をはじめとする5名の幹事、各学会から2名ずつ計6名の執筆者で会議を重ねて、草案が完成したのは2007年7月でした。その後、パブリックコメントを募集して、今年の5月に発行したという経緯です。

「マルチソサエティガイドライン」作成に際して、どのような想いや期待がありましたか?

佐藤私は、日本環境感染学会の執筆メンバーとして作成に参加しましたが、消化器以外の軟性内視鏡の安全な洗浄・消毒まで参考になるものになればいいという期待がありました。

藤田技師会のガイドラインを遵守する施設は増えましたが、技師会からの感染管理対策情報がうまく伝わっていない施設もあります。したがって、クリニックなどでも内視鏡の洗浄・消毒のレベルを上げたいという想いがありました。

「マルチソサエティガイドライン」の概要

内視鏡室全体の感染管理を考えた構成

「マルチソサエティガイドライン」を作成するにあたって留意した点をお聞かせください。

田村内視鏡室以外からみてもわかりやすいガイドラインであり、ICC(Infection Control Committee)の視点や、ICT(Infection Control Team)の活動に直結した内容であることを心がけました。

佐藤私は、第1章の総説と第2章の内視鏡室のレイアウトなどを主に担当しました。もし、内視鏡室が感染源となってアウトブレイクした場合、スコープや鉗子だけが要因ではありません。したがって、内視鏡室全体の感染管理を考えた対策を示しており、「内視鏡室のレイアウト」→「検査前処置、検査時対応」→「洗浄・消毒、乾燥、保管」→「内視鏡の消毒」という構成になっています。

田村君英氏の画像

日本消化器内視鏡技師会会長
(平塚胃腸病院・検査部)
田村 君英 氏

「感染管理の専門家の意見を採り入れ、病院全体の感染管理の視点から作られています」

「マルチソサエティガイドライン」の構成や表現などの特徴を教えてください。

藤田各施設の事情にあったマニュアルに落とし込みやすいよう総論的にまとめてあります。要点のみを簡潔に示して、解説を付けている点が新しいのではないでしょうか。

佐藤技師会のガイドラインに記載されている感染管理の基本事項については、既に読者は承知しているものとして省略しています。

また、「マルチソサエティガイドライン」の本文は、“……しなければなない”、“……する(行う)”、“……すべきである”といった表現で示す必要最低限の要求事項と、“……望ましい”といった表現での要求事項との2 つの段階に分けています。後者は、できる限り実施すべきであるが、種々の理由で実現困難な場合もあることを想定した要求事項です。

履歴管理が重要視された

3つの学会が共同作成したわけですが、相違点もあったのではないでしょうか?

藤田議論になったのは、強酸性電解水を内視鏡の消毒に加えるかどうかでした。

佐藤強酸性電解水は使い方に十分な注意が必要なこともあって、高水準消毒薬とは区別して表現されています。最終的にはガイドラインに記載することになりましたが、日本環境感染学会の先生方からの助言で、使用する場合の留意点が詳細に述べられています。

田村「マルチソサエティガイドライン」には電解酸性水と書かれていますが、生成装置を内蔵した器械で作られる強酸性電解水に限定しています。ソフト酸性水や弱酸性電解水といわれるものは除外しています。

少なくとも強酸性電解水生成器が認可されている状況にあり、強酸性電解水を使用している施設があるという事実があります。管理を適切に行わずに強酸性電解水を使用して交差感染等が起きた場合、使用者責任は生じますので、高水準消毒薬とは違う厳密な取り扱いを要求することも必要だろうというのが技師会としての認識です。

佐藤絹子さんの画像

日本消化器内視鏡技師会・安全管理委員会委員長
(NTT 東日本関東病院・内視鏡部)
佐藤 絹子 さん

「適切に洗浄して濃度管理をすれば、フタラール製剤で5分間消毒して消毒効果に問題はありません」

洗浄・消毒の履歴管理についても記載されていますね。

藤田「洗浄・消毒の記録を残すことが望ましい」と書かれていますが、感染管理面から重要視されました。履歴管理で質の保証をするためには高水準消毒薬の濃度チェックを適切に行う必要があり、そういう意味でも履歴管理は自分たちの仕事の内容を高めていくという意味があります。

佐藤もし事故があった時の証明というよりも、きちっと洗浄・消毒をした証拠を残すという意識で行ってもらいたいと思います。9月に発行した技師会の会報でも履歴管理を推奨しています。

「マルチソサエティガイドライン」の扱い方について

フタラール製剤の消毒時間は添付文書通りで良い

高水準消毒薬の消毒時間に関する記述が添付文書と異なっていますね。

佐藤その点は、「マルチソサエティガイドライン」の冒頭文にも触れている通り、議論になった点です。フタラール製剤の消毒時間は添付文書では5分間以上となっており、5分間消毒しているのが現実ですが、「マルチソサエティガイドライン」では、種々の実験データや欧米での承認条件の違いを勘案して10分間という記載になっています。

田村根拠になったのは実験データであり、Clostridium difficileの芽胞の10の5乗という菌数に対する殺芽胞効果です。そういう状態が通常起きうるかどうかという点が議論になりました。つまり、きっちりとした用手洗浄によって付着菌数はもっと少ないのではないかということです。

藤田実験データを再検討する必要があるかもしれませんが、厚生労働省がフタラール製剤の消毒時間を5分間以上として承認しています。元来、高水準消毒薬の定義では芽胞を除くとなっています。実際、承認発売後、臨床現場で消毒効果について疑念はあがっていません。また、根拠になった文献の実験データでも Clostridium difficileの芽胞に対して5分間で消毒効果が得られています。

佐藤実際の臨床現場では、消毒の前に十分に洗浄して、消毒薬の濃度管理をして、すすぎをするという当然の使用方法であれば、フタラール製剤で5分間消毒して消毒効果に問題はありません。

藤田賢一氏の写真

日本消化器内視鏡技師会・安全管理委員会委員
(帝京大学溝口病院・内視鏡室)
藤田 賢一 氏

「消化器内視鏡以外の軟性内視鏡分野でも応用されていくことが望まれます」

消化器以外の軟性内視鏡の洗浄・消毒レベルを上げたい

その他、「マルチソサエティガイドライン」の現場での扱い方についてアドバイスをお願いします。

田村技師会のガイドラインをもとに院内マニュアルを作成しているのであれば、大きく見直す必要はないと思います。追加する内容があるとすれば、スコープやその他の機器の洗浄・消毒以外の部分でしょう。各施設での内視鏡診療の一連の流れに合わせ、職員と患者さんの動線を加味することなどが考えられます。

また、感染管理の専門家の意見を採り入れた意義は大きく、病院全体の感染管理の視点から作られていますので、ICTと共同してマニュアルを見直すことが望まれます。

藤田消化器内視鏡分野はガイドラインが普及してからは、他部門に比べて感染はあまり心配しないレベルに上がってきたという自負があります。したがって、この「マルチソサエティガイドライン」が消化器内視鏡以外の軟性内視鏡の洗浄・消毒レベル向上につながることが望まれます。

佐藤私も、消化器に限らず全ての軟性内視鏡による感染は避けたいと願っています。そのためにこのガイドラインが役立つことを期待しています。

座談会の様子の写真